ざっかけないマンガたち

ちょっと変わったマンガを紹介します。

高瀬ガーデン(山元町高瀬東石山原・宮後)後編

前回は高瀬ガーデンの概要を記したが、後編ではこの分譲地を特徴づける景観について書いていきたい。

takomusume.hatenablog.com

 

まずは空き家について。高瀬ガーデンを東西へ渡す道路の一画に、空き家の中でも一際荒れ果て、鬱蒼とした木々に囲まれた場所がある。廃車となった軽トラ、タイヤ、ドラム缶など廃棄するのが一苦労な難物ばかりが残置され、家屋も踏み入れることが困難なほど草木に覆われている。

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廃村に迷い込んだかのような風景である。

 どの程度の年数を経てこのような惨状と化したのかは定かではないが、厄介な残置物もさることながら、低木が生い茂った上にヤブガラシが絡みつき、全くもって汚らしい。こんな有様では藪蚊が大量に湧くだけでなくタヌキやハクビシンすらも住み着き、家庭菜園を荒らしたり糞害のおそれも出てくるだろう。ヤブガラシやクズなどのツル植物に侵害された庭・家屋は伐採の駆除効率が極めて悪く、もはやこの土地ごと死んでいるといって過言ではない。こんな空き家が分譲地のど真ん中に位置しており、しかも更地が多いことから嫌でも目に入ってしまうので、拭うことのできない汚点となっている。

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写真中央部に目を凝らすと窓が見える。

次に挙げたいのが、未開発エリアの低木林である。高瀬ガーデンが謎の空白地帯を広く有していることは前編でも触れたとおりで、ここを訪れる前は山林が麓に向かって急峻となっており開発を諦めたのだろうと予想していたが、そんなことはまるでなく地続きとなっているだけであり、一層謎が深まる結果となった。単純に、開発業者の資金面の乏しさと見通しの無さが原因だったのかもしれない。先程は空き家が害獣の棲家となる危険性をくだくだしく述べたが、未開発の山林が目の前に迫っているようではクマでもシカでも、大型哺乳類がすぐそばに潜んでいる可能性すらある。

 

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鬱蒼とした雑木林が目前に迫っている。

実はここ高瀬ガーデンでも雑木林の合間に開発の痕跡を偲ばせる脇道がある。この脇道は東石山原と宮後を斜めに繋いだ格好となっており、人一人がようやく通れるほどの隘路である。仙台市内では丘陵地に切り開いた団地の一画に市民の憩いの場として緑地を設けていることが多いが、ここもそういった意図があったのだろうか。東石山原側からの入り口は道路に接している一方、その先にある宮後側の出口は家庭菜園が設けられている様子であった。

途中、道の真ん中に特定外来生物ウシガエルが通行しており、まるで先導するかのような威風であった。環境省のホームページによるとウシガエルは付近の在来種を駆逐するほどの捕食性を有しており、緑豊かと言えなくもないこの団地にあって、生態系すらも破壊されているのかと暗澹たる心持ちとなる。私の実家でも田んぼの畦道にこのウシガエルを見かけることがあるが、体長20センチにも及ぶ巨躯と毒々しい茶褐色が薄気味悪く、夜になれば「ウオーウオー」という不気味で野太い鳴き声も出すため、住環境に及ぼす影響は少なくない。

 

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造成の残滓ともいえる小道がある。

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ウシガエル(写真中央)が行く道を先導してくれた。ウシガエルは捕食性が強くトノサマガエルやモリアオガエルなどの在来種と競合し、生態系に甚大な影響を与える。

もう一つ挙げるのは高瀬ガーデンの街路樹である。東西に伸びる道路沿いへ細々と植えられているのだが、悲しいことに全く手入れはされていない。この木はカイヅカイブキ貝塚伊吹)という常緑針葉樹で、枝葉が密生し目隠し効果が得られることと、排気ガスにも強いことから、かつては一般家庭の生け垣や企業の植栽、公園などへ盛んに用いられた栽培品種である。今でも古い団地を歩いているとこんもりとした可愛らしいカイヅカイブキを多く見かけるが、それは適切に剪定された努力の証であり、その一方放任され伸び放題になっている樹姿もまた多い。高瀬ガーデンのカイヅカイブキは言うまでもなく後者であって、枝が螺旋状に生育していくのを全くコントロールできず、火焔型土器のように八方へ伸び散らかっている。厄介なことに、放任されたカイヅカイブキを強く剪定してしまうと針状の葉を形成して哀れな痩身をさらすこととなってしまう。つまり、詰みである。このカイヅカイブキを活用して生け垣を作っている家もわずかに見られたが、今となっては建築の支障でしかない彼らを生かす術はない。早い話、丸ごと伐採してしまうほうがこの団地のためになるだろう。

 

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放任された枝葉が角のように猛々しく伸びてしまっている。

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強く剪定してしまうと、痩せ細り別の木のような樹勢となる。

最後に、この高瀬ガーデンにも太陽光パネルが闖入していることに触れておきたい。家庭用で自家消費を目的とした太陽光発電について言うべきことはないが、空き地へ次々に建設された野立て式の太陽光パネルは紛うことなきゴミである。こんなところに数枚のパネルを立てて細い細い潮流を流し込んだところで何の意味もないのである。これ以上は個人的な呪詛となってしまうため差し控えるが、団地の中央部で日当たりも素晴らしい立地に太陽光パネルが置かれてしまった住民の苦悩は察するに余り有る。例えば空き地を活用し集会所が建設され、災害時は太陽光パネルで蓄電しておいた電気が住民を救う、といったストーリーも考えられなくはないが、そんな気概はなく、得体の知れない業者の懐を温めているに過ぎない。

宮城の山間部では草が伸び放題となってその細い潮流すらも作れなくなった太陽光パネルを見ることもあるが、ここのパネルは一応草を刈った形跡がある。しかし、その向かいの空き地は用地取得に失敗したのだろうか、低木が生い茂りパネルの大半を覆い尽くしてしまっている。この草木はやがてパネル建設地ごと飲み込み、林野へ還っていくこととなるがその前に太陽光パネル廃棄の手立てを打たなければ、ツル植物による引込線の絶縁損壊によって通電火災のリスクも生じてくる。

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素晴らしい立地に太陽光パネルが林立している。

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パネルの裏側は申し訳程度に刈り込んである。

 

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パネル正面が草木に覆われているため発電効率が著しく低下している。

管理不全の空き家、無駄な雑木林、伸び放題の街路樹、そして太陽光パネルと限界ニュータウンのコンテンツを網羅し尽くしてしまっている高瀬ガーデンは、勇敢な新規入居者を迎え息絶え絶えに延命しながらもその崩壊は近い。

 

次回は未定ですが、山元町か、温泉街に隣接する別荘地も紹介していこうと考えています。

高瀬ガーデン(山元町高瀬東石山原・宮後)前編 - ざっかけないマンガたち