ざっかけないマンガたち

ちょっと変わったマンガを紹介します。

高瀬ガーデン(山元町高瀬東石山原・宮後)前編

山元町では梅ヶ丘団地に引き続き高瀬ガーデンを紹介する。航空写真で見ると一帯はひょうたんのように一部がえぐれており、歪な形状を呈している。通常団地といえば楕円状の街区がほとんどだが、高瀬ガーデンでは未開発の山林がそのままとなっているため歪曲してしまっているようだ。

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実に中途半端な形状である。

 

 

梅ヶ丘団地からは南へ1キロほどの道のりで、山元町の山側を南北に貫く「アップルライン」を進むと「高瀬ガーデン」の看板が見えてくる。

山元町はイチゴやブドウの名産地として有名だが、実はリンゴ栽培でも宮城有数の生産量を誇っている。昭和30年頃から養蚕業の転換として取り組まれたリンゴ栽培は町西部の丘陵地であるアップルライン沿いに盛え、現在でも知る人ぞ知る逸品として直売所への常連が絶えないという。また、昔ながらの直売所や個人販売に販路を限っており、市場へあまり出回らないことでも知られているそうだ。このアップルラインを走ると確かにリンゴ農園が多く、直売小屋も点々としていて国道6号沿いの田園風景とはまた違った様相を見せている。

高瀬ガーデン前には町内を循環するバス停があり、本数は日に4本と流石に少ないが辛うじて孤立化が救済されているようだ。しかしこのバスで向かった先の町役場から、生鮮食品も扱うドラッグストアへは更に1キロ以上離れており、高齢者が徒歩で移動するにはなかなか厳しいところがある。

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アップルラインのちょうど中間に高瀬ガーデンの入り口を示す看板が設置されている。

 

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アップルライン沿いには道案内を兼ねた看板が交差点ごとに立っている。

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アップルラインの路傍に淋しく立つバス停。

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この本数では1本逃すと致命的である。

 

高瀬ガーデンの入り口には、またしても資材を露地へ置いたままの家が見られる。本人としては整頓している方なのかもしれないが、分譲地の玄関口ともいえるこの立地でお構いなしに何でも並べておくのは控えていただきたいものである。見たところ事務所兼資材置き場といった体裁だが、倉庫と思われる小屋から徐々に資材が溢れており、ただのガラクタ置き場と化すのは時間の問題であろう。こうした資材置き場は付近への不法投棄を誘発し、住環境の粗放化を進行させる一因ともなっている。

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最低限の配慮は施されているが、見る人によっては既にガラクタ置き場である。

この家の向かいには住居図の看板が設置されている。奇観である。なぜか看板が地面に突き刺さっており、住居図を見るためにはしゃがみ込まなければいけない。設置した当初からこのような姿だったのかは知る由もないが、例えば元々の支柱が折れてしまってその修復費用も捻出できないとこんなことになるのか、無駄に重々しい庇と相まって高瀬ガーデンの投げやりっぷりが早くも露呈している。

「高瀬ガーデン居住者案内図」を見ると団地の歪な形状は航空写真と一致することから、空白地帯の山林は造成当時から全く変わっていないことが推測される。この歪曲のせいで道路を碁盤目状に整備することなど到底適わず、幼児がブロック遊びで稚拙に組み上げたような街並みが構成されている。また案内図にほとんど住民の名前はなく、数少ない入居者の名前も所々塗りつぶされ、虫食い状というより虫も食ってないという有様となっている。現地はこの案内図以上に家屋が見られたため単に更新が滞っているだけなのかもしれないが、それならばいっそ撤去してしまった方が余程すっきりするだろう。

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住居図が地面にめり込んでいる。

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ここまで用を成さない住居図を見たことはない。

古い団地を訪問する際、電柱札が情報収集の手がかりとなることは前回記したとおりである。高瀬ガーデンの電力柱には「武真高瀬住宅線」と記されたプレートが架かっており、この不一致は造成工事の最中にあってニュータウンの名称が定まらず仮称のままルート構築した証跡であろう。「武真」は開発業者の略称と思われるため、調べてみると仙台市青葉区に「武真商事」という不動産屋が存在することが分かった。しかしこれ以上のことは分からず、「武真商事」と高瀬ガーデンの関連も不明である。

更にNTT柱を巡視しようと思ったのだが、お散歩というか徘徊というか、妙に目付きの鋭いパジャマ姿のご老人に見張られてしまい、そこからは車の外へあまり出なかったので建柱年が分かる電柱札は撮影できなかった。

少々マニアックな話に脱線するが、この高瀬ガーデンでは団地にも関わらず当たり前のように10キロトランス(柱上変圧器)が乗っている。仙台市内の住宅地ではどんなに古く小さな団地でも最低30キロのトランスが乗っているものだが、本来農村や山間集落にしか設置されていない小容量のトランスが揚替え(あげかえ)されていないことからも、この分譲地の放逐が伺えるのである。10キロトランスの容量では電力消費の少ない住居であってもせいぜい数戸が利用率の限度である。

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建柱までにニュータウンの名称が定まっていなかったことが推測される。

 

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数戸を賄うことしかできない小容量のトランス。

改めて書くまでもなく団地には古い住居が多く、住んでいるのかどうかよく分からない家も数多く点在している。建物の造りから見て、梅ヶ丘団地と同様昭和50年代の造成と見て間違いないだろう。そんな中、所々築浅の建売住宅も見られ、徘徊老人の他にも幼児を連れた女性を一組だけ見かけた。不便な立地をものともせず、わずかながらも新規の入居者が流入しているのかもしれない。残念ながら公園はないのだが、更地だらけで見通しは遠大に利くため車の通行をあまり気にせず散歩を楽しめそうではある。

この高瀬ガーデンでは山元町の最安値である75坪80万円の更地が売り出されている一方、ほぼ同規模の区画で70坪280万円だったりと坪単価がややバグっている。高瀬ガーデンの西側は「東石山原」、東側は「宮後」という小字に分断されており、アップルラインからの進入が容易でバス停も近い東石山原の方が家屋は多い。ちなみに最安の更地が宮後地区、280万円の方は東石山原地区である。

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築浅の建売住宅も見かける。余談だが、引違い窓をこれだけ多く使ってしまうと気密は失われがちである。

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高瀬ガーデンの東奥側、宮後地区の土地。資産価値は無い。

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高瀬ガーデンの手前西側に位置するのが東石山原地区。お気に入り登録は筆者。

 

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宮後地区からの進入路は細く急峻である。

少し長くなってしまったため、前編・後編に分けます。後編では高瀬ガーデンの景観について触れる予定です。

takomusume.hatenablog.com