西仙台ハイランド団地(青葉区新川佐手山)その3
西仙台ハイランド団地については第1回で中心部、第2回で開発放棄地の広がる佐手山北を紹介してきた。今回は西仙台ハイランド跡地にもっとも近い南側のエリアを紹介する。このエリアも住所地番等で他と区別できる点は乏しいのだが、前回と同様東北電力の電柱札に倣って「佐手山南」と名付けることにしたい。
西仙台ハイランド団地の特徴として、航空写真を見ても分かるとおり更地以上に未利用地が広大な範囲に及んでいることが挙げられる。佐手山南はその傾向が一層強くなっており、これは西仙台ハイランド団地がどちらかといえば別荘としての需要を当て込んで開発され、整地を前提に分譲されたことを示している。実際この最奥ともいえるエリアは鬱蒼とした森林に洒落た外観の家々が点在しており、別荘地としての趣が確かに感じられる。
団地手前のエリアは概ね土地の手入れが行き届いており、どこを切り取っても画になるような綺麗な風景が広がっている。しかし、松食い虫による松枯れを発症している区画も一部存在しあまり楽観視できる状況ではない。
枯損木の伐採はその土地の所有者が真っ先に行うべきだが、所有者が管理を怠りさらに連絡も取れない場合はどうなってしまうのだろうか。隣接する区画や道路に枝がはみ出しているくらいだったら住民の善意で対処されることもあろうが、台風や積雪で倒木してしまったらもはや災害である。やむを得ず自治会の積立を崩して伐採・除去にあたるとしても、戸数の多い中心部の住民が人数比で多くの負担を強いられており、別荘地の住民との分断が起こりかねない。
こういった問題はなにも西仙台ハイランド団地に限った話ではない。多くの別荘地は管理保全が自己責任となっているゆえにバブル崩壊後の荒廃は甚だしく、むしろ佐手山南のように手入れされているケースは珍しい。自治会と住民がその本来の機能と役割を果たしている一方で、この西仙台ハイランド団地を全体として見ると中心部は定住者のエリア、佐手山南は別荘利用者のエリアと住み分けがなされていることが気がかりとなる。つまりこの2つのエリアを同じ自治会にまとめたとき、団地の用途が異なっているため管理費用の負担を巡ってどうしても軋轢が生じてくるのではないかと予想されるのである。ただし、こんなことは私の憶測に過ぎない。自治会を中心とした人間関係が良好に継続しており、そもそも定住と別荘の区別が曖昧な西仙台ハイランド団地ではお互い様と割り切っている可能性も十分にあり得る。そろそろ土地の探索に戻ろうと思う、
佐手山南で見られる土地仲介の看板は大阪系の業者が圧倒的に多い。更にその大阪系の業者の中でも「リアル不動産販売」の看板が9割以上を占めている。試しに「ラビーネット不動産」という土地情報サイトでリアル不動産販売の掲載件数を見てみると2442件もの登録があった。しかも扱っている物件は坪単価1万円以下のどう見ても売り物にならなそうな山林や荒れ地ばかりである。こんな土地を全国各地から掻き集めて何が楽しいのだろうか。
聞くところによると、大阪系の業者は物件自体を売る気が全くなく、管理費や広告宣伝費の名目で売主から手数料を徴収し成り立っているとのこと。土地所有者へ片っ端からダイレクトメールを送ったり電話したりしてカモを探しているようだ。
恐らく多くが投機目的で売買されたであろうこれらの土地所有者は、長年塩漬けになった「資産」に困り果てている。そんな折「リゾート地の土地売却をお考えですか?」と魅惑的な文言を添えたチラシが自宅に届く。「○月○日までに下記フリーダイヤルへお電話を!」と誘われるままに電話してみたところ「責任を持って売却に当たります!」「売れるまでの管理も代行します!」と何とも心強い。それでは…と契約書を交わしたが最後、不明確な名目で盛り沢山の30万円もの請求書が届き、後になってからよくよく調べてみると限りなく違法に近い商法なのだが、民事訴訟を起こそうにもかえって高くつきそうであり弁護士も乗り気ではない。結局は泣き寝入りである。
これはあくまで悪徳商法の一例でありリアル不動産販売がそういった商売を行っているとは限らないのだが、「事業内容」の一つに掲げている「管理」事業が草茫々の土地に看板を突き立てているだけの現状を見る限りでは「お客様に代わり責任をもって管理・マネジメントを実施」というHPの文言と実際の所業がかけ離れていることだけは明らかである。
かつて日本中がバブルに沸いた時代、土地を所有することは重要な資産形成の一手でありステータスでもあったため山々に多くの別荘地が開発され切り売りされていったのだが、実需と乖離したその販売手法はバブル崩壊と同時に瓦解し、その夢の跡はこうして哀れな残骸を晒している。かつての被害者ともいえる土地所有者は高齢となり、子どもたちに負の遺産を残すまいと土地処分に意気込んでいた矢先、詐欺まがいの業者に捕まって二次被害を受けるという実態がこの佐手山南にありありと表出しているのである。
佐手山南も例によって太陽光発電所の侵食を許しており、南側の高台に位置するもっとも日当たりのよい区画がその標的とされている。しかしながらパネルの真正面には松林が茂っており、日光が真上に来るとき以外はまともに発電していないのではないかと思われる。しかも別の発電所がすぐそばにも位置しており、同様に日照不足気味である。この南側のエリアは太陽光パネルが置かれている一部分だけが辛うじて整地・伐採されているものの、その他は全く刈り払いされず、けもの道と変わらない状況に陥っている。家も全く建っておらず、草木は太陽光パネルをも容易に呑み込んでやがて林野へ還っていくのがそう遠くない将来といえそうだ。
この太陽光パネルが置かれている区画を通り過ぎた後、来た道とは別のルートで団地手前側へ戻ろうとしたのだが、道の真ん中を資材やらゴミやらで埋め尽くしているエリアに行き着いてしまった。何となく人の気配も感じたので退却し、元の道から帰ることにした。戻った先で、先程のゴミだらけのエリアを遠くから見ると反対側にも白のオデッセイ(リニューアルする前のヤンチャな方々が好む方)が停まっていて、道の両端を含む広大なエリアをご使用になっている様子である。
Google Mapのストリートビューは果敢にもこのエリアにアタックしており、飯場のようなプレハブ小屋と無数の車が克明に撮影されている。更にストリートビューの断片には放し飼いの犬も写り込んでいた。私は以前、滞納料金の回収業務を担当していたことがあり、「訳アリ」の家々を一軒一軒訪問していた経験から或る種の勘が働くのだが、残念ながらこのプレハブ小屋は余りにもその共通点が多い。即ち、辺鄙な場所で家はボロく、所有者のよく分からない車がたくさんあって、ついでに金もないのに犬・猫を飼っているのがその特徴である。役満である。
当ブログの西仙台ハイランド団地第1回の記事で「ハイランド犬猫問題」というチラシが貼られた掲示板の画像を載せたことがある。チラシでは犬の放し飼いを警告していたのだが、ここの住人がその張本人である可能性は限りなく高い。共有私道を塞ぐように置かれた車と溢れかえったゴミは外界との接触を拒む特有の挙動であり、世間のルールに頓着しない性格であることは明白である。別荘地の景観を著しく損なう居住実態にしても付近住民の顰蹙を買うのは必至で、この周辺一帯を内側から壊死させている病害といえよう。
松枯れを起こした枯損木と大阪系の業者、太陽光パネル、無法者の存在と、ここまで佐手山南の問題点を幾つも挙げてきたのだが、実はもっとも深刻なのが多量の不法投棄である。団地奥側へ行くと処分費用が発生する冷蔵庫やテレビといった大型家電が点々と投棄されており、その他にも木材、タイヤ、果てはレーシングカーまであらゆるゴミの最終処分場と化している。これらの不法投棄は家電リサイクル法の制定によって皮肉にも急増した経緯を持っているが、お隣の西仙台ハイランドでも跡地にアスファルトを違法に投棄したニュースが話題となったことがあり、負の連鎖は途絶えることがない。ちなみに逮捕された社長の会社も大阪市中央区である。開発業者の青葉ゴルフとハイランド自治会の名を冠して「不法投棄厳禁」と物々しく書かれた看板を一つだけ見つけたが、その裏にも朽ちた土管が鎮座しており物悲しい有様となっている。
この日、佐手山南の団地向かい側も訪問し大型の廃墟を発見したのだが詳細は不明である。また木柵で囲まれたキャンプ場のようなエリアもあったが、同じく運営状況が不明である。不明だらけで申し訳無いが、「エスコート」というチューニング工場の向かいにある廃車だらけの店の営業状況も今ひとつ分からなかった。最後に、メガソーラー発電所となった西仙台ハイランド跡地にも入り口近くまでは来たのだが、関係者以外立入禁止のため手前を撮影することしかできなかった。
西仙台ハイランド遊園地や仙台ハイランドカントリークラブ(ゴルフ場)、仙台ハイランドレースウェイ(サーキット場)の顛末についてはネット上にいくつかの記事を見かけるが、いずれも断片的で包括的な情報を得るには至らなかった。今回の訪問で西仙台ハイランド団地の連載は一旦終了とするが、これらの興隆と衰亡については興味深いところが多く、情報が集まり次第記事化したいと思う。
次回は新川地区の別荘地を紹介します。
前回までの記事はこちら。