ざっかけないマンガたち

ちょっと変わったマンガを紹介します。

柏木原別荘(大崎市鳴子温泉鬼首柏木原)

個人的な思い出話しなのだが以前私は秋田の由利本荘市に住んでいたことがあって、ひたすらのどかな町をそれなりに気に入っていた。のんびりした生活を続けながら観光スポットと称される地もほとんど踏破し、だんだん飽きてくる。そのうち週末は県外へ繰り出すようになり、宮城にもよく足を伸ばしていた。金曜の夜仕事が終わった後に車を走らせ、矢島、鳥海、院内、秋の宮と国道108号線をひたすら南東へと進むとやがて最大の難所鬼首峠が立ちはだかる。鳴子ダム沿いを通るこの峠道はダイナミックな風景が随所に広がる景勝地としても有名なのだが、とにかく狭く細く、曲がりくねっていてなかなか容易ではない。ここを越えさえすれば鳴子から大崎へだだっ広い道が続き、その後仙台のネカフェで夜を過ごす、というのが当時の楽しみだった。

鬼首を通るたびに「柏木原別荘地」という看板が気になっていた。看板が立つ場所は間歇泉がある吹上地区にも鬼首スキー場がある小向原地区にも隣接せず、途絶とまでは言わないがアクセスとしてはずいぶん中途半端で、こんなところは売れずに廃墟だらけだろうなと勝手に思いながら通過していた。その頃は過疎地をネタにブログを書くようになるとは思ってもいなかったのだが、実のところ柏木原別荘地は理想ともいえる環境が整っており、推奨すべきポイントも合わせて紹介していこうと思う。

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この枝状の区画が柏木原別荘地。

 看板横の細い坂を登っていくとすぐに別荘地が現れる。「各私有地に無断立入禁止」という少々物々しい看板が入り口に立っているが、物件の調査ということでご容赦をいただく。アスファルトは改良したばかりなのだろうか、坂道も別荘地を貫く町道も舗装がとてもきれいで穴だらけの鳳鳴平と比べて別天地である。家々は趣向を凝らした外観がよく映え、手入れの良さを感じさせる管理状態となっている。

坂を上り詰めた先は行き止まりとなっているが、ここからは向かいにそびえる矢楯岳を存分に眺めることができる。改めて建っている家の並びを見てみると、互い違いに配置され各々が風景を邪魔しないよう考慮された区画となっており、おそらくどの家からも豊かな山並みを堪能できるのはないかと思われる。眺望の面から言えば配電線と電話線が共架になっていないのは少々残念か。電柱札は「柏木原枝線」「鳴子鬼首線」と記載されていた。

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別荘地を示す看板が立っている。

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坂道の舗装は極めて良好である。道路に迫る樹木の紅葉も美しい。

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ゴミステーションにやや物々しい看板がある。

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別荘地を貫く道路の左右には枝のように私道が伸びている。

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黒い焼き杉と赤い屋根のコントラストが印象的なログハウス。

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西洋風のログハウス。アンテナが設置されている構内柱はあえて木柱にしたのだろうか。

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傾斜が幸いし、どの家からも矢楯岳の伸びやかな稜線を楽しむことができる。

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電力柱には柏木原枝線と表記されている。

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NTT柱には鳴子鬼首の表記。

電柱の写真を撮り終え事前にチェックしていた中古物件を探そうと歩き始めた矢先、営業車が乗り付けて来て誰何されてしまった。見知らぬ来訪者を怪しんで声をかけてきたのかと思ったのが、実は不動産の担当者でそのまま営業トークが始まった。曰く、柏木原別荘は高砂住宅販売がほぼ専任で仲介していること、鳴子の別荘地の中でも人気が高く永住者が多いため自主管理が行き届いていること、湧出する単純泉硫化水素の心配がなく安心、その掛け流し温泉は路上融雪にも活用等々、矢継早にこちらが知りたい情報を教えてくれた。最たる魅力として月々の管理費が6千円だけということを強調しており、そのまま信用していいの良いのならば確かに格安と言えるだろう。不動産屋はどうせならばと内覧を勧めてきたのだが、あまり本気にされても困るので数枚の写真だけ撮らせてもらい退散することにした。

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チラシ入りのファイルケースが中古戸建ての窓に設置されており、自由に持ち出せるよう配慮されている。

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掛け流し温泉が路上融雪に活用されている。側溝から立ち昇る湯気は温泉街の情趣さえも感じさせる。


1軒目の中古住宅は木立に囲まれた平屋建ての2DK。洋風の白塗りで、瀟洒な外観はいかにも別荘という感じで好ましい。アットホームのお気に入り登録数も15人と注目度は高いようだ。風呂は一般的なユニットバスが採用されている。

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森の中の別荘。こういうので良いんだよ。

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550万円で提供中。「2階建」は誤記。

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現地で入手したチラシ。深い緑の木立もまた美しい。

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風呂は普通のユニットバス。

2軒目は2階建の3LDK。平凡な外観は残念だが、2階からは山並みを存分に望めるだろう。風呂には内壁の荒っぽい石張りと浴槽へのタイルが配され、使い勝手の点で好みは分かれるだろうが雰囲気は悪くない。

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外壁の古臭い色味はともかく、灯油タンクと水道管の蛍光色が意味不明である。

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物件価格は1軒目とほぼ同額の560万円。

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深読みし過ぎかもしれないが、どこか傷みやすい箇所があっての「一部リフォーム済」なのかと勘ぐってしまう。

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旅館風の浴室。

ちなみに、私が事前にチェックした時点で掲載情報は2件だけだったがいつの間にかもう1件増えていた。こちらは広大な菜園を売りとしており、少々強気の890万円。

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いつの間にか3件目も出ていた。

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ものすごく広い菜園付きである。

鬼首は、2015年に花渕山バイパスが開通したことで恐ろしい峠道を回避できるようになり、観光客だけでなく永住者にとっても朗報であったことだろう。月並みだが、行ってみないと分からないこともあるものだ。

次回は柏木原別荘にほど近い食堂を紹介します。

takomusume.hatenablog.com